2歳と306〜308日目 

金曜は学生時代のゼミ友達と二人でジックリと飲んだ。
いつも僕から誘わないと出てこない彼から、初めて誘われて。
「こりゃ彼女でもできたかなぁ」と思いながら会うと、何の
事はなく、いつもの淡々とした彼。
新宿の裏通りの、小さいけど清潔な小料理屋の白木のカウン
ターに座り、捌きたてではない手の込んだ鯛の刺身や、天ぷ
ら、煮凝り等々、少し高めだけど手が込んでいて美味しい酒
肴をつつきながら、お酒を飲んだ。
彼は一昨年に自営業の父上を亡くされていて、今年度になっ
てようやく、色々な事が整理できてきた、といった話から始
まり、会社の後輩の教育に悩んでいる、とか「仕事変えよう
か悩んでる」みたいな、僕らの年代(30代半ば過ぎ)ならで
はと思われる話題で一通り花が咲く。
段々酒も回ってきた頃に、彼がポツっと「俺、実は対人恐怖
症でな」と言う。
学生時代を思い返しても、特にそんな事を感じていなかった
ので「何言ってんの」みたいにいなしていたんだけど、意外
と彼は流さず、その事を滔々と話始めた。
ずっと彼女がいなかったのは、対人恐怖症が元で嫌われるん
じゃないかって不安が先に立ってしまうこと。
最近、尊敬できる上司にもその事を吐露したところ、「いい
んじゃないの?それで」と言われ、心のシコリというかコン
プレックスが無くなったこと云々を話始めたので、いつもの
ペースで酒を飲んじゃいかんと思い、ジックリと話を聞いた。
父上の事に整理が着いてきたこと、自分自身の問題に解決の
糸口が見えてきた事、仕事に変化が見えてきている事、と
聞いてみると、彼にとって大きく舵を切るタイミングなんだ
なぁと思い、そんなタイミングで僕を呼び出し、一切を吐露
してくれたことを嬉しく思い、なんかこうたまらん気持ちに
なって思わず泣き笑いみたいな顔をしながら無言で彼の肩を
バシバシ叩いてしまった。
彼もなんか苦笑したような顔を下に向けたまま、僕に叩かれ
るままになっていた。
二人で1升ちょっと飲んだところで、お開き。
彼と分かれて、帰りの電車の中で彼との会話を思い出しなが
ら「人生を歩んでいるんだなぁ」と思い、少し寂しいような、
少し焦りにも似た気持ちになってしまい、駅から家までを30
分近くかけて回り道したりノンビリ歩いたりして帰った。
家に帰ったら、居間に布団が引いてあり、かみさんのメモで
冷蔵庫のつまみについて書いてある。
ソォ〜っと寝室の襖を開けて、かみさんとデビが寝ている様
子を見てから、今に戻り、冷蔵庫のつまみで一杯だけ飲んで
寝る。
翌朝6時に起きて、まだあまり車も走っていない街中を自転
車で畑に向かう途中「俺にはこの家族がいるんだ!」ってな、
感動的な衝動が沸々と沸いてきて、ペダルを思いっきり踏み
込んだ。
その途端に足を踏み外し、くるぶしを思いっきりペダルに打
ちつけ、今もまだ腫れて痛い(笑)
30代後半なので、思いは熱く、言動はクールに。